防爆情報

ご挨拶

◆IEC 防爆の薦め

  電気エネルギーに起因する爆発を抑制する技術、即ち“防爆”は、わが国も含めて主要国では長い歴史を持っています。それは産業革命以来  主要国の成長を支えてきた石炭産業とともに歩んできたからに他なりません。石炭採掘現場の坑内という特殊な環境条件で誘発される爆発災害 の一要因としてメタンガスに対する電気エネルギーによる“着火現象”が主要因でとりあげられ、それに対する技術方式の開発が現在でも国際的 に連綿と“防爆”の一翼を担っているという実態があります。

  一方、先の第二次世界大戦で欧米連合軍が作戦遂行上の課題の一つとして“設備の安全基準” に対する国際標準化の必要性を痛感し、その一環 として戦後いちはやく「国際電気標準会議(IEC)」の中に“防爆”関連技術を対象とする技術委員会(TC31)を欧米主要国主導で 立ち上げたいという経緯があります。現在のIECで100を越えるTCの中で比較的古い分野に入るTC31も当初は坑内対応が主体であった のは当然の流れと考えられますが、1950年半ば以降国際的に台頭してきた石炭産業以外の特に石油・石油化学関連を主体とする一般産業での“防爆” の必要性が高まり1975年以降IEC/TC31両者の技術思想を分けて取組む態様が顕著になってきました。その背景として、坑内では「爆発の誘発 ありき」と過酷な環境条件を前提とするため過剰防護設備とならざるを得ない事情がありますが、それ以外の一般産業ではそれと同等の前提条件は 必要なく、しかも換気条件などを加味すれば「爆発の誘発確立は限りなく低い」という技術思想が根底となっています。このことはまた坑内対応を そのまま一般産業に適応すれば不必要な高コストを招いてしまうことを意味しています。   いまやIEC/TC31を舞台にした欧米主要国の“防爆”の合理化は猛烈なスピードで問題定義されており、それらは従来の IEC規格体系の変容にも影響を及ぼしています。   このような1975年頃以降のIEC/TC31における技術思想の変化にわが国は対応しないまま殆ど坑内の危険レベルと変わらないまま 施工実態を続けているため残念ながら“国際競争力のない”事態を招いてしまっており、わが国と欧米主要国との“落差”はもはや埋めようのないほど といわざるを得ません。

  防爆電気・計装研究所は、IEC規格の最新情報ならびに その背景となるIEC/TC31における技術思考の動きなどを提供 することによって少しなりとも“落差”が埋まればと願って設立いたしました。わが国の実態に問題意識をもたれている方にはその解明と今後の方向 付けなどでお役に立ちたいと念じております。  以下に関連事項を列記しますので参照願います。

防爆電気・計装研究所の目的と活動

*目的

防爆電気・計装研究所は、防爆電気システムに関連するIEC規格の現状と動向について国内関係者への情報提供ならびに啓蒙・普及を行う拠点となることを目的とする。

*活動

上記の目的を達成するために次に示す活動を行う。

  1. 防爆電気システムに関連するIEC 規格、海外文献について調査・研究し、それらを技術資料として整備・発行する。
  2. 情報提供ならびに啓蒙・普及のために「IEC 防爆研究会」を主宰するほか適時にセミナーを開催する。
  3. 国内関係者から求められるコンサルティング業務を行う。
  4. その他研究所の目的を達成するために必要な活動を行う。

防爆電気・計装研究所 所長 鈴木 健二

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技術と安全

  • 日本語の“安全”に「全て安心」とか「全く安心」などの語感があるためか安全を祈願すれば「何事も起こらない」という錯覚を持ってしまい、挙句の果てにユートピアでしかあり得ない“絶対安全”などという言葉が創作(?)されてしまうのかも知れない。もとより“安全”を望まない者などいるわけはないが、それはまずわれわれの周りにはびこる“危険”を排除することによって かち取ることができると理解する必要がある。つまり「危険の実像」を出来る限り正確に知ることが安全を手にする上で不可欠の条件となる。いいかえれば「安全確保」と「危険排除」とは同意語と考えるべきかも知れない。ここで大事なことは、危険の要因が設計段階で予測されたものであって装置・システムで起こるかも知れない“危険のすべて”ではないということである。つまり「全て安心」ではなく、もしそれを願うならば「予測を超えて起こるかもしれないすべての危険 」を排除しなければならないことになる。技術的にはそれは不可能である。なぜならば設計段階での予測は有限であり、施行する技術方式も限られているからである。
  • 装置・システムにおける国際的に共通の「安全の基軸」をひとことでいえば‘Loss prevention and Safety promotion' という技術思想が支えになっていると考えられる。これをふまえた“防 爆”の原点は、‘Risk’を‘acceotable low level’まで低減(reduce)することであり、そのレベル (ゼロではない!)を論理的に、また積み重ねられた経験的知識(know - how)も加味して自ら考えること、これが国際的に共通の“防爆”に対する基本的技術思想である。
  • 古来人間は不確実で予測できない危険に対して頑丈な砦を築いて守ることを繰り返してきたが 、それが必ずしも難攻不落でないことは歴史が示す通りである。 「備えあれば憂いなし」と「備えは過剰の方が安心」とは全く違う意味合いであること、特に現代の“備え”はソフトウェア技術に負うところ大と認識すべきであろう。

防爆電気・計装研究所 所長 鈴木 健二

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